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主要アーティスト解説

 それでは最低この人は押さえておいて欲しいと思う、ボサノヴァ・アーティストを紹介していきましょう。後に紹介するMPBの範疇に含まれるアーティストは除き、初期のボサノヴァを創るのにかかわったアーティストを中心に、ここでは語っていきたいと思います。(50音順)

アントニオ・カルロス・ジョビン(Antonio Carlos Jobim)

キーパーソンの項参照

アストラッド・ジルベルト(Astrud Gilberto)

 ジョアン・ジルベルトの最初の奥さん。かの『ゲッツ・ジルベルト』という超ヒットアルバムで「イパネマの娘」を歌っている人です。飛び入りで参加したにもかかわらず、だんなを差し置いて有名になってしまいました。良い意味で素人っぽい歌が偶然ボサノヴァにマッチしていたというラッキーな人とも言えるかもしれません。

『ジ・アストラッド・ジルベルト・アルバム』

 国内盤では「おいしい水」というタイトルで発売されている記念すべきファーストアルバム。無数にある彼女のベスト盤から聴くのも悪くはないけど(僕もそうだった)せっかくオリジナルのかたちで再発されているので、これから聴くのがおしゃれだと思います。ジョビンの曲を中心に歌ったこのアルバムは、非の打ち所のない美しいアルバムです。

ヴァンダ・サー(Wanda Sa)

 近年ではすっかり貫録ある体格(笑)、歌声になってしまいましたが、初期の作品はこれぞボサノヴァといえるウイスパーヴォイスで聴衆を魅了しました。ライヴ盤などを聴くと彼女が歌いだした瞬間、男性客が一斉に溜息をつくのが聞こえてきそうなほど色っぽい声質です。というか不安定な歌唱力が結果的にそんなフィーリングを生み出しているという感じ。アストラッド・ジルベルトが好きなひとはこちらもマストでしょう。

『ヴァガメンチ』


 ヴァンダ・サーのヴォーカルの魅力とボサノヴァの魅力がいやというほど楽しめる典型的ボサノヴァ作品。ジャケット、サウンド共に完璧にボサノヴァしています。フレンチポップス、ロリータマニアにも超お薦め。

ヴィニシウス・ヂ・モライス(Vinicius De Moraes)

 ジョアン・ジルベルトのデビューシングルであり、ボサノヴァ第一号と言える「シェガ・ヂ・サウダーヂ」と、最もヒットしたボサノヴァ曲「イパネマの娘」の作詩者であるというだけで、ボサノヴァ界の超VIPといえる詩人がヴィニシウス・ヂ・モライス。さらにそれだけではなく、バーデン・パウエルとの「ビリンバウ」をはじめとするアフロ・サンバ作品、トッキーニョとの多くの作品、戯曲『オルフェウ』など、この人がいなかったらボサノヴァはかなり薄いものになっていたかもしれないと思える超人です。

『ヴィニシウス/カイミ・ノ・ズンズン』

 バイーアの漁師の暮らしなどをサンバで表現して一世を風靡したドリヴァル・カイミとヴィニシウスが、60年代にリオにあった『ズンズン』というクラブで繰り広げていたショーの様子をスタジオで再現した企画作品。カイミと同じバイーア出身のクアルテート・エン・シーの天使のコーラス、詩人のポエトリーリーディング等聴きどころ満載のエレンコの代表作品。

エウミール・デオダート(Eumir Deodato)

 彼はボサノヴァアーティストというより、アメリカで成功したフュージョンアーティストという印象を持たれる方も多いと思いますが、彼がアレンジしたボサノヴァを僕たちは無意識に聴いています。ナラ・レオンやクアルテート・エン・シー、マルコス・ヴァーリの歌声に聴き入っている背後で奏でられるアレンジは、デオダートによるものである可能性が高いのです。ヘンリー・マンシーニが書いた理論書などを頼りに独学で管弦楽アレンジを修得した時、彼はまだ十代でした。僕の好きなロックアーティスト、ビヨークがストリングスアレンジに彼を起用したのは記憶に新しいとこです。

『無意味な風景』
 それまでにも、もうすでにかなりの数のボサノヴァの名盤のアレンジを手掛けていた彼の22歳の遅すぎたデビューアルバム。全曲ジョビンの作品ですが彼独自のクールなアレンジがかっこいい。アレンジャーの作品ということでどう聴けばいいのか戸惑うかもしれませんが素直にこの心地好いサウンドに身を任せましょう。

カルロス・リラ(Carlos Lyra)

 ホベルト・メネスカルと共にギター教室でボサノヴァの弾き方を教えていた彼は、ジョビンとはまた違ったオーソドックスに美しい名曲を多数書いたソングライターです。ハンサムで歌声も甘く、ボサノヴァがオヤジの音楽ではなかったことを証明するカッコイイ人。以前来日公演を見に行きましたが、かなりのお年なのに皮のパンツが渋く決まってました。

『ザ・サウンド・オブ・イパネマ』

 向かって右がカルロス・リラ。アメリカのサックス奏者ポール・ウインターとの共演盤です。彼自身のヴォーカルで聴く名曲の数々は絶品!!ソフトな歌声でギターも上手いと思うのですがなぜかギタリストとしての評価はあまり高くないのは不思議。

クアルテート・エン・シー(Quarteto Em Cy)

 ブラジル音楽を語る上で避けることはできない聖地、バイーア出身の4人組女性コーラスグループ。初期から何度かメンバーチェンジを繰り返していますが現在も活動中。とにかくそのすごさは歌声を聴けばわかります。もともとは4人姉妹ということで、声質の似た4人が繰り出す不協和音を駆使したハーモニーは得も言われぬ美しさ。あまりコーラスグループを聴かない人も一聴の価値あり。

『クアルテート・エン・シー』

 とにかく一曲目「ヘザ」の冒頭のハーモニーを聴いただけで鳥肌が起ちます。アレンジもデオダートを中心とした典型的なボサノヴァです。ちょっと他のジャンルでは聴いたことのない不思議な感じさえする歌声をぜひ一度聴いてみてください。

ジョアン・ジルベルト(Joao Gilberto)

キーパーソンの項参照。

ジョアン・ドナート(Joao Donato)

 名著『ボサノヴァの歴史』のなかで、ジョアン・ジルベルトの次くらいの頻度で取り上げられていたキーボーディスト。奇行癖はジョアンに勝るとも劣らないという。ルックスもジョアン・ジルベルトになんか似てますよね。でもファッション感覚はドナートの方がヒップです。活動的にはボサノヴァの範疇に捕らわれない様々なテイストを感じさせるサウンド。でも根っこにあるのはやはりボサノヴァ感覚。ギターミュージックではないけど印象的なフレーズを持った名曲が多数あり、彼の作品を取り上げるアーティストも多いです。

『ケン・エ・ケン』

 初のヴォーカルを披露した73年の作品。純粋なボサノヴァ的サウンドではありませんがシロウトっぽい歌い方が実にボサノヴァ的。後にガル・コスタが歌いスタンダードとなった「アテ・ケン・サービ」もドナート自身の歌で聴けます。アシスタント・プロデューサーはマルコス・ヴァーリ。

ジョニー・アルフ(Johnny Alf)

 ジョニー・アルフはピアノ弾語りスタイルのシンガーソングライター。ボサノヴァが生まれる前のリオのナイトクラブで彼が革新的な演奏をしているのを、後にボサノヴァを作る若者たちがこぞって見に行ったという。彼の作った「エウ・イ・ア・ブリザ」「イルザォン・ア・トア」「ウ・キ・エ・アマール」「セウ・イ・マール」「ハパス・ヂ・ベン」などの曲は多くのボサノヴァアーティストが演奏しています。

シルヴィア・テリス(Sylvia Telles)

 デビューする前にはジョアン・ジルベルトの恋人でもあった歌姫。ボサノヴァ誕生以前から活動していた人だけあって、マイーザにも少し似たしっかりした歌唱力を持っています。とはいえ決して大げさな歌い方ではないので、もともとボサノヴァ的な感覚を持った歌手だったのでしょう。交通事故により32歳という若さでこの世を去りました。

『ボッサ・バランソ・バラーダ』

 ボサノヴァの名門レーベル「エレンコ」からリリースされた名盤。アロイジオ・ヂ・オリヴェイラというプロデューサーが設立したこのレーベルは上質なボサノヴァを多数リリースしましたが、この作品はそれらの中でも1、2をあらそう作品だと思います。マエストロ・ガヤによるアレンジも秀逸。

セルジオ・メンデス(Sergio Mendes)

 渡米組ミュージシャンの中で最も成功した一人。98年にナイキのCMで使用されタンバ・トリオのヴァージョンが有名になったジョルジ・ベン作「マシュケナダ」は、もともとこの人の専売特許的代表曲でした。ジャズ指向だった彼がどこで神の声を聞いたのか、一転してポップな女性ヴォーカルをフィーチュアーしたブラジル66で「マシュケナダ」を世界的に大ヒットさせました。とはいえ単なるナツメロアーティストではなく、近年はバイーアの新星カルリーニョス・ブラウンを起用したアルバムなどを精力的にリリースしています。

『セルジオ・メンデス&ブラジル’66』


 ジャズボサ・アーティストからポップ・アーティストへの一大転換作品。それまでにもヴァンダ・サーを起用したヴォーカル作品を作っていましたがここまで「売れる」作品を急に作り上げたのは神憑かり的。ビートルズの「デイトリッパー」も取り上げています。

ナラ・レオン(Nara Leao)

 内気なお金持ちのお嬢さんがギターを始めた頃がボサノヴァの誕生期と重なり、彼女の家がボサノヴァを創った若きミュージシャンのたまり場となりました。そこで彼女はボサノヴァのミューズとなるのですが、紆余曲折がありボサノヴァの全盛時代には彼女はボサノヴァから離れ、サンバやプロテスト・ソングに心が移っていました。ボサノヴァの全盛時代に決定的なナラ・レオンによるボサノヴァ・アルバムが無いのは残念。とはいえ軍政による亡命時代のパリ録音や80年代に入ってからの純ボサノヴァ作品はオリジナル・ボサノヴァアーティストならではの味わいがあり感慨深いです。89年に惜しくも亡くなっています。

『美しきボサノヴァのミューズ』


 軍事政権の圧力によりフランスに亡命していた1971年に、女性ギタリスト、トゥッカと録音したボサノヴァ名曲集。ボサノヴァ・ムーブメントが完全に終わっていた時期に録音された作品だけに、客観的で落ち着いた雰囲気のアルバムです。ナラのサロンでは実際にこんなふうに演奏されてたのかなと想像が膨らむ静かな名盤。

『イパネマの娘』

 ナラ・レオンは脳腫瘍によって89年に47歳で亡くなってしまったのですが、これはその四年前の85年にショーロのグループ、カメラータ・カリオカやホベルト・メネスカルらと来日した際に日本のミュージシャン(吉田和雄、ヤヒロトモヒロ他)と録音された作品です。なぜ、おすすめするかというと、ここにはボサノヴァのスタンダード中のスタンダードが16曲収められていて、ボサノヴァの曲を知るには格好のアルバムだと思うからです。また、アーティスト解説にも書きましたがナラのボサノヴァアルバムというのは意外に少ないので、これは貴重な作品と言えるでしょう。『美しきボサノヴァのミューズ』はちょっと内省的なアルバムですが、こちらはとても明るい雰囲気で、ボサノヴァ初心者にぜひ聴いて欲しいアルバムです。

バーデン・パウエル(Baden Powell)

 弾き語り中心のジョアン・ジルベルトスタイルとは全く違った、アグレッシヴなボサノヴァのギター・スタイルを創った天才ギタリスト。「機関銃のような」と評されるギターは多くのギタリストに影響を与えました。開放弦をおり混ぜながらバリバリ弾きまくる奏法は全ギタリスト必聴。ギターが上手いだけでなくソングライターとしても、ジョビンらに比べるとちょっと泥臭いがエモーショナルな名曲を沢山創りました。(惜しくも2000年9月26日に他界)

『ア・ヴォンターヂ』

 一曲目「イパネマの娘」でのプレイは多くのギタリストに影響を与えました。細かく刻むように弦をはじく弾き方は他のジャンルでは見られない奏法です。とりあえず聴いてその音色を確認してください。

ホベルト・メネスカル(Roberto Menescal)

 個人的にはボサノヴァ的な曲を創らせればジョビンの次くらいに評価されてもいいと思うギタリスト。代表曲「小舟」は間違いなくフランシス・レイの「男と女」のテーマ曲に影響を与えていると思います。その他にも上品な泥臭さの微塵もない美しい曲を多数作曲。近年は毎年のように来日してちょっとありがたみが薄れていますが、僕はボサノヴァを語るには忘れてはならない重要人物だと思います。

『ア・ボサノヴァ・ヂ・ホベルト・メネスカル』

 ボサノヴァを語る上で忘れることの出来ないレーベル“エレンコ”からリリースされたインストゥルメンタル・アルバム。12曲中メネスカル作品は4曲で、あとは、ジョビン、ドゥルヴァル・フェヘイラ、シコ・フェイトーザ、カルロス・リラというボサノヴァ世代の作家の作品が並ぶ。メネスカルのリーダーアルバムとは言うものの、実はアレンジのデオダート(なんと当時若干20歳!)のテイストがかなり出た作品で、上品な“これぞエレンコサウンド”といえる計算された演奏。ピアノ、フルート、ヴィブラフォンのユニゾンが爽やかです。メネスカルはエレキギターを担当。

マイーザ(Maysa)

 類まれなる才能を浪費しつくしわずか41歳で亡くなった天才女性ヴォーカリスト。ブラジルでも有数の財閥の息子と結婚しながら音楽の道を選び、その地位を追われ恋多き人生を駆け抜けました。そんなゴシップはさておきこの人のヴォーカルは凄みがありすぎます。酒に溺れボロボロのステージを見せても、聴衆はブーイングすることなく拍手で許したというエピソードが示すとおり、その並外れた歌唱力、表現力をブラジル人は愛しました。僕の最も好きな歌手の一人。人生の深淵を感じさせる重く深い歌声はボサノヴァとは少し違ったフィーリングですが(ボサノヴァが生まれる前からすでに大歌手の地位にいた)ぜひ聴いて欲しい素晴らしい歌手です。

『マイーザの世界へようこそ』

 ファーストとセカンドアルバムのカップリング盤、国内盤で買えます。前半8曲がファーストで全ての曲がマイーザの作曲によるもの。20歳の時の録音らしいですが、この深みはなんだ! この歳にして人生の苦しみ、悲しみを表現しきっている。歌声も狂おしいほどの美しさ。

『マイーザ』

 エレンコからリリースされた1963年「ボングルメ」でのライヴ盤。僕はこのアルバムでマイーザに引き込まれました。緩急自在の深みのあるヴォーカルは風格を感じさせます。メネスカルバンドも的確なバッキングでサポート。しっとりとした大人の世界です。

マルコス・ヴァーリ(Marcos Valle)

 ボサノヴァ第二世代といわれるシンガーソングライター。ここだけの話し「おしゃれ」なボサノヴァの男性ヴォーカルを聴きたいという人には、ジョアンよりもこの人から聴いてみるのをお薦めします。文学で言えばジョアンは純文学、マルコスは散文やエッセイ。絵画でいえばジョアンはファインアート、マルコスはポップアートって感じかな? 軍事政権により世間がきなくさくなり音楽もボサノヴァからプロテストソングに移行していた時期、彼は「愛と微笑みと花」「太陽、塩、南」というボサノヴァの典型的なイメージを追求しました。声質も甘く聴きやすいです。代表作はかの「サマーサンバ」。

『サンバ・ヂマイス』

 1964年、21歳のファースト・アルバム。もうこの時点ですでにマルコスの個性は完成しており、ファーストということが信じられないほど。ただしソングライターとしては曲が揃っていなかったのか、半分はジョビン、ジョニー・アルフ、ドゥルヴァル・フェヘイラの作品。エウミール・デオダートのアレンジも冴えまくっており、とてもリッチなサウンドを紡ぎ出しています。

『シンガー・ソングライター』

 ファーストの約1年後に出たセカンド・アルバム。マルコス最大のヒット曲「サマー・サンバ」を含む12曲は全てオリジナル曲。卓越したソングライター・センスが炸裂しています。いまだにスタンダードと呼ばれる完成度を持ったこれらの曲を、わずか一年で作り上げた手腕は天才といって間違いないでしょう。ヴォーカリストとしてもその甘美かつクールな歌声はとても魅力的で、ボサノヴァ男性ヴォーカルの最高峰とい言い切ってしまいたいです。

『サンバ68』
 ブラジルではボサノヴァ・ムーブメントも終焉していた1968年に北米向けにリリースされた作品。ゆえに英語曲が多くブラジルマニアにはウケが悪いけど僕は好きな作品です。典型的ボサノヴァから少し進化したグルーヴィーな面もある作品。アレンジは例によってデオダート。タイトルとはうらはらにサンバぽい曲は入っていません。

ルイス・ボンファ(Luis Bonfa)

 この人は純粋にボサノヴァ的かといえばそうでない部分もあるのですが、知名度からいってやはりはずすことはできないアーティストです。何故にボサノヴァ的でないかというと、ボサノヴァ・ムーブメントが起ころうとしていたときすでにれっきとたプロミュージシャンだったのですね。映画「黒いオルフェ」の挿入曲「カーニヴァルの朝」も作っていたし。なんか僕の世代の感覚で言えば、テクニックも素養もあるのにパンク・ムーヴメントにのっかったポリスみたいなかんじかな???。でもちゃんとブラジル的感覚もあるし聴くべき作品もある優れたギタリストであることには異論はありません。ジョアンも「ボンファに捧ぐ」という曲をつくっています。

『ブラジリアーナ』

 奥さんのマリア・トレードと作り上げた夢のような世界。ボンファのギターもさることながら彼女の歌がこれぞボサノヴァなささやきヴォイスで心地好いです。ちょっと甘すぎる部分もあるけど歌もの好きがボンファを知るにはいいアルバムです。



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